弁護士の向原です。

ネット上の誹謗中傷事件について、裁判手続を行う場合、それがどこの裁判所で取り扱われるのか=裁判管轄が問題となります。

裁判管轄がどこになるかによって、出廷するために交通費・日当という余計なコストに関係してくるので、当事者にとっては切実な問題となりえます。これを、誹謗中傷事件の処理類型ごとにみていきます。

1 相手方特定手続
以下は、当事務所のHPでご紹介している、誹謗中傷事件処理の流れです。

上記のうち、「第1段階」「第2段階」の発信者情報開示に関わる裁判手続には
①仮処分
②本裁判
があります。
①仮処分 については、基本的に、プロバイダの所在地になります。
そして、プロバイダの多くは、東京や大阪にありますので、そこの裁判所が原則的な管轄になります。

②本裁判 についても同様です。
しかし、②本裁判 の場合、福岡で起こすこともできなくはありませんし、実際に私はそうしています。

①仮処分 のほうが手続は迅速で、非公開ですが、裁判所に預ける担保金が必要であること(あとでそのまま戻ってくることが殆ど)、及び、福岡で管轄がとりにくい(出張旅費・日当が余分にかかる)、というデメリットがあります。
迅速さ・非公開というメリットを重視する場合、担保金や、東京大阪への出張というデメリットを考慮しても、仮処分を選択するという方法はありえますが、このメリットを重視しない場合、本裁判でいくという方法をとることになります。
(もしくは、東京や大阪の連携先弁護士と連携するという方法を取り、仮処分をするということも考えられます)

そして、「第3段階」の損害賠償請求については、被害者の住所地を管轄する裁判所で起こせますので、福岡にお住まいの方ならば、福岡の裁判所で裁判を起こすことに、なんの問題もありません。

2 削除請求
削除請求は、民法709条の不法行為に関する裁判と考えられています。
よって、「不法行為があった地」(民訴法5条9号)で裁判をお起こすことができます。
このとき、誹謗中傷=不法行為をした発信者の所在地を予め知ることはできません。
が、インターネットによる誹謗中傷は、その被害結果が閲覧場所でも生じます。
そこで、通常は、被害者の住所地を管轄にできると理解しています。

3 さいごに
インターネットにおける誹謗中傷案件は、類型ごとに細かい判断が必要であるため、この手の訴訟や法的手続に詳しい弁護士に対応を相談(着手する稼働かも含め)し、依頼することが適切と思われます。
なお、当事務所では、遠隔地が裁判管轄となっても、プロバイダが多く所在する東京・大阪の弁護士とのチーム連携がシームレスに可能ですから、お気軽にご相談ください。