今日は、「人権大会」も結構だけど、

日弁連はもうちょっとこういうことも考えてくれよ

というテーマを取り挙げます。

それが、タイトルにもある「弁護士法の古くさい条文」についての考察です。

27条・72条・基本規程11条の在り方とか、20条3項の複数事務所禁止を取りあげます。

1 27条・72条・基本規程11条について

個人的には、いろいろ考えた結果、弁護士が下請化させられて業務を経済的に支配されないために死守すべき条文だと思うに至ったのですが、ただ、それでも、他士業とのアライアンスを組むときに問題になる条文なのでしばしば扱いに悩みます。顧客と直接契約にすれば形式的には問題はないのでそうしますが。

ただ、最近しばしば見られる「司法書士法人○○グループ(Aとする)」「弁護士法人○○グループ(Bとする)」(○○は共通)として、別法人の体を成しているが、互いに継続的なアライアンス関係をもち、Aである程度の処理をしてしまい、この処理が非弁と認められるに至ったのちにBにやらせるパターンというのがあると思うのです。

この○○グループのような強固なアライアンスではなく、Aがコンサル、Bが弁護士というパターンで、互いに顧問契約を締結し、事件を融通し合うという関係もありうる(現実にはA→Bへの紹介というのが多いでしょう。ということは、かかるアライアンスは、B→Aへの対価提供が疑われやすいと経済的には思える)。

通常、Aにあたる非弁には、非弁との認識につき、法律の錯誤があったりします(そもそも彼らは弁護士法をあまり知らない)。

ただ弁護士はその前の非弁の認識については知る由もない、あるいは、知り得ません。知ってそれを受けたら弁護士は基本規程11条違反になりますが、このあたりは、弁護士のアンテナ感度が低いほうがトクなので、詳しく聞けば聞くほど弁護士のリスクが上がるという罠。これでは公平とも思えません。

もっとも、上記の○○グループの関係でいえば、「わかるやろ?」という推認が働きやすい、というのはあると思います。

このあたりをどう整理するのか、とくに○○グループとか、AコンサルB弁護士双方顧問関係、という強固なアライアンス関係の場合に、27条等をどう扱うのか、と言うのはあると思います。

法務省通達で出てきている「親会社の計算で雇ってるインハウスが子会社の相談に有償で乗るのはいいことか」という問題とも関連します。

このあたりが簡明に整理できないようであれば、法文が時代遅れということでしょう。

2 20条3項

弁護士が少ない時代の遺物だと思っています。

だいたい、弁護士過疎とか勝手にドグマを作ってるくせに、法律事務所設立にこんな厳しい制限を掛けている時点で、やってることのスジが通ってないです。

法人でなければ複数事務所にできない、というのは、明文ではなく、解釈によって導かれる結論なんですが、そもそも法人と言っても1人法人だってあり、非法人でも何十人も弁護士が在籍する事務所だってあるのに、なぜ法人なら複数事務所可で、非法人なら不可なのでしょう。

理解ができません。

次に、過疎地などでは、毎日弁護士がいても暇です。そもそも田舎の裁判所なんて、裁判官がいない日のほうが多いことがあります。弁護士だって同様でいいはずです(非常駐)。

いちいち常駐にするのは人件費をはじめとしたコストがかかります。

ところが、法は原則としてこれを認めません。

法人でも、支店を建てるときには、原則、支店ごとに弁護士を置く必要があります(常駐)。

これを非常駐にしようとすると、弁護士会の許可を取る必要があります。これが結構面倒なのです。

※なお私が法人に在籍していたころ、恥ずかしながら、法人でこの手続がうまくできず失敗したことがあります(私の監督不行届です)。

でも、東京や大阪から「過払い相談会」といってやってくる弁護士は、田舎の公民館とかで「相談会」をやるわけで、これって「複数法律事務所」として咎められるわけではないです(そういう前例がない)。したがって、「過払い相談会」でやってくる他地域の弁護士は、たとえば福岡県内でした「相談会」で受任した依頼者の業務について問題を起こしたとき(起こしやすい傾向がある)、その依頼者が福岡県弁護士会に苦情を申し出てきたとしても、福岡県弁護士会は、その弁護士が、他地域の弁護士会所属だから、手を出せません(当該弁護士の所属する弁護士会に連絡するようにするしかない。たらい回しになる)。

つまり、「まじめに法人化してまじめに非常駐許可を取ろうとしているまじめな法律事務所は弁護士会の縛りの下にあり、他方、そういう手続をすっ飛ばしてヨソから「相談会」でやってくる法律事務所には弁護士会の縛りがない」という、わけのわからない状態になっているのです。言い換えれば、こういう状態をゆるしているのが、20条3項ではないかと思います。

そもそも、法律事務所を法人化するメリットは、せいぜい、「支店を立てられること」だけなので、このように考えると、バカ正直に「法人化」して「支店」をおっ立てるより、適宜「相談会」をやったほうがいいでしょ、という結論が導かれます。

すなわち、20条3項の複数事務所禁止規定は、もはや画に描いた餅と化している、というべきでしょう。

だいたい、過疎地対策というなら、非常駐を大幅に認めればたりるし、そもそも法人でないから支店を建ててはならない、ということに上記の通り理由がないのだから、そこを緩和する法改正運動をすれば、ひまわり基金とかをカネかけて作る必要も全然なかったはずなのです。

3 結語

そういうことすら考えず、安直にカネを使う日弁連は、人権大会とかなんちゃら大会をするのも結構ですが(これだってカネがかかる)、そういう、成果もよく見えないお祭り事に割くリソースがあるんなら、そのリソースを少しでも、われわれの日常業務の足元を見るのに使ったほうが、清算的なのではないか、と思います。

死刑廃止論議とか裁判員制度をどうすれば上手く進められるかとかアウトリーチがどうたらなどより、弁護士法の議論してほしいものですね。