少し前は養育費回収サービス、今は退職代行。
法律事務に隣接あるいは足を突っ込んでいるかのような「周辺サービス」がちらほら出てきています。
これら「周辺サービス」に対しては、常に、「非弁」にあたらないか、という疑義が呈されます。
「非弁」とは、無資格者が「法律事件」について「有償」で「法律事務」を取り扱うことを指すのですが、ここでいう「法律事務」のイメージは、講学的な定義があり、裁判例がその脇を固めているので、講学的にはそれなりのガイドラインがあると理解しておりますが、残念ながらあまり人口に膾炙しているとはいえないマイナー分野です。
すなわち「法律事務」に対する一般的な世間のイメージは
爆発しまくり 阿鼻叫喚 業火の渦中 というイメージなのでしょうが
私の講学的観点からの理解では
「法律事務」=地雷原=今は静穏だが、うまく道を踏まないと爆発する という理解です。
とはいえ、文字でやりとりするにすぎない世界なので、世間の人たちは、前者で理解していることが多いと思います。
これは、業際踏んでくる他士業(取締対象とした人)から出てくる弁解からも、明らかです。法律隣接職というプロでさえ、前者の理解です。
しかしながら、現実に紛争の現場に佇むと、後者のほうが当を得ている、という理解に収斂してゆきます。到着時にはすでに焼け野原になっていることも多いです。
最初はなんてことないと思って突き進んだら、実はもう爆発がスタートしていて、対応が遅れて焼け野原、というわけです。
これを退職代行に照らして言うと、単に「退職届を出してバックレればいい」という発想でいくと、わりとまずい(自身の過去の訴訟経験でも、バックレ系での会社からの損害賠償はそれなりに認められている)。
単に退職届出せば労働契約解除意思表示だから労働契約解除されて会社行かなくていいよね♪程度の発想だと、ちょっと気をつけないといけない。
ここで「周辺サービス」と士業の性質の違いが現れてきます。
事業会社が絡むと、こうした込み入った話、リスクを見せる話はしない(そもそも法律的にできない。したら鑑定(法72)になりうる)傾向にあります。
「うちに頼めばバラ色ですよ」というセールスが入りやすい。
これが士業との違いです。 士業はシリアスなリスクも示す必要があるからです。
リスクを示すと、セールスにはマイナスです。
しかし、事業会社にとっては、セールスこそが命です。
これは、士業と事業会社の役割の違いからくる性質の違いであり、どっちが正しくて間違ってるという話ではないです。
こうした話は、今回話題になった「退職代行」以外でも、交通事故・相続において「他士業」が関与する場合にも、同様に問題となり得ます。
そういうものだと思って、利用するべき、という話です。

