いよいよ二回試験に合格し、弁護士登録された皆様、誠におめでとうございます!
この時期は、新規登録者と接する機会も(忘年会などで)出てくるのですが、自分の新規登録のときを思い出しますね。
年明けには本格的にお仕事も大変になってくると思いますが、どうか頑張ってください!

さて、こうやって新規登録者が出てくると、会内でも、登録者名簿が配布され、登録の状況がわかります。
登録の状況をみると、業界の業況がわりと見えます。

そこで、某弁護士向けMLに投稿した、当福岡県弁護士会の新規登録の概況と雑感を簡単にまとめたものを、ブログ用に少しアレンジして、以下に掲載いたします。

新規登録の概況

1 全県で36名。例年より少なめ。
2 福岡部会は31名。
それ以外の部会は非常に少ない。北九州3名、筑後2名、筑豊0名)
3 就職先の特徴
(1)全国展開型の事務所が10名。昨年までより少ないか。
(2)交通事故を専門に扱う事務所の雇用が多い。
(3)インハウス登録がない。
(4)例年採用する事務所(≒いわゆる地方の名門的事務所)の採用が目立たない。
(5)即独と見られる開業は2件。
(6)筑後登録の2名はいずれも同じ事務所に所属(その事務所が新人を独占)
(7)公益系と見られる事務所(公設的事務所も含む)の採用は全部で3名。

寸評

1 北九州エリアは総人口100万を優に超えるエリアであり、福岡エリアに匹敵する人口があり、かつ、法人数は北九州市のほうが多いのですが(もともと工業地帯であるためでしょう)、福岡エリアへの一極集中が目立つのが特徴です。
その理由はよくわかっていません。
2 求人については、福岡ですら苦労したという声を聞くので(印象論)、他エリアではもっと難航していたと想定されます。難航していたから他エリアでの採用が少ないのか、採用需要がないのかという点はいまひとつわかっていません。
3 就職難という状況は脱していると評価してさしつかえなさそうですが、注意すべきは、①就職した人の定着率(離職率)、そしてなにより②離職理由です。
特に、②については、売上やキャリアパスの目処が立っての独立・移籍なのか、「やむを得ない事情」による独立なのかによって、意味が変わってきます。
日弁連はこのことに関するまったくデータをもっていません。移籍についての斡旋機関などもないので、その点については、日弁連はちゃんと考えるべきところではないかと思います。
4 インハウスは、事務所所属後に会社に移籍する形態が多いのかなと想像しています(福利厚生の問題が圧倒的にインハウスが有利なので、女性が出産後に移籍するなど)。
5 上記「新規登録の概況」3の(1)(2)(4)(7)が弁護士の産業としての現況・トレンドをよく反映しているように、個人的には感じています。

合格者数問題(法曹人口問題)との関係についての個人的な感想

弁護士の需要は、保険商品の発展などにより、今後、かなり限定的になっていくのだろうな(お金を取れるような仕事となると、さらに限定的になっていく)と見ています。
合格者数問題について、私は、現時点では、1500人より下げると地方での求人が詰むと見ています(上記3の研究データがあれば、「移籍組」が人材として見えてきますが、残念ながらそのような研究はされていないようですので、いないものとして考えざるを得ません)。
これを合格者数問題にかぶせて考えると、単に「需要がない」と主張するだけでは徒手空拳のごとくであるように思います。①需要の数量と、②弁護士の供給(新規登録者+移籍者)を比較検討して「弁護士数をこの程度とする需要にとどまる」といえるかどうかを検討する必要があるように思います。

 そして、①需要の数量を決めるファクターとしては、ⅰ訴訟・調停・刑事訴訟・破産等の新受件数、ⅱ保険商品の発展の様子、ⅲ今後の人口・産業動態あたりの精査分析を要すると思います。

 また、②新規登録者+移籍者の数も、特に、上記の通り「移籍者」がどの程度いて、それが「供給」側に算入できるかの検討が必要であると思います。