会社法296条においては、毎事業年度の終了後一定の時期=だいたい3ヶ月=※に、定時株主総会の招集・開催を義務付けています。

※会社法124条2項で、ある日を基準とする株主名簿の効力が3ヶ月とされていることからそれ以降は招集ができないこと、また、有価証券報告書提出会社は事業終了年度3ヶ月以内に有価証券報告書を提出しなければならないから、それまでに総会で決算承認を済ませておく必要があるため

このとき、株主に対して、
・貸借対照表や損益計算書などの「計算書類」を提供することが求められます(会社法437条)。
・さらに
「計算書類」は、定時株主総会の2週間前から会社に備え置くことが義務付けられています(会社法442条1項1号)。

上場企業では言うに及ばずですが、中小企業ではこれが忘れられていることのほうが多いというのが私の実感です。そこまで手間をかけられない、そもそも知らない、など様々な事情があるかとは思います。
 総会そのものを書類上だけ、というところも多いのかな、という実感を持っています。

 とはいえ、会社法831条1項1号では、株主総会の招集手続に法令違反があった場合、当該株主総会(定時総会も臨時総会も同じ扱い)における決議が取り消されると規定されています。
 
 もし、計算書類等の備え置きや、株主への提供を怠った場合には

招集手続に法令違反がある

ことになります。

こうなると、当該株主総会にかかる決議の全てが取り消される、ということになります。
当該株主総会で決議したことが、まるごとぶっ飛ぶ、というリスクがあります。
 
こういう、株主総会決議取消の争いが生じるような場面は、中小企業では想定されないよ(^^)と思われるかもしれません。
しかし、経験上、社内でのいざこざ(例:取締役解任をめぐる紛争や、経営支配権に関する争いなど)が勃発することはしばしば見受けられます。同族企業の場合、株式が相続されて、それまでうまくバランスが取れていた企業内で、バランスが崩れて、紛争が勃発するというケースもあります。

とかく我々は、「手続」というものを軽視しがちです。
しかし、
きちんとした手続を踏まないことによって株主総会決議の効力がぶっとぶ、といったことで足元を救われないよう、普段から会社運営手続は、法律に照らしながら進めておく必要があるように感じます。