固定残業代については、多くの企業が採用していますね。
ところが、今般、東京地裁において、固定残業代の有効性を否定する裁判例が出ました。
事案としては、労災における給付基礎日額の算定が争われた事件で、固定残業代の有効性が否定された事例です。

残業代が固定されている「固定残業代」の労働時間より実際の残業時間はおよそ2倍あり、かけ離れているとして国の決定を取り消す判決を言い渡しました。

5年前、千葉県茂原市の飲食店で店長を務めていた当時50代の男性が急死し、労働基準監督署から長時間労働による過労死として労災給付金の支給が認められました。
労働基準監督署は、飲食店の経営会社が取り入れていたとする、残業代が固定された「固定残業代」の制度に基づき、支給額を算定したのに対し、男性の遺族は、実際の残業時間に基づいて算定すべきだと訴えました。
26日の判決で、東京地方裁判所の佐久間健吉裁判長は、「店長の実際の残業時間は123時間から141時間で、『固定残業代』で想定される67時間のおよそ2倍と、かけ離れていて、この会社の『固定残業代』は、時間外労働の対価として支払われていたとはいえない」と判断しました。
その上で、「固定残業代」が有効だという前提で、算定したことは違法と判断し、労働基準監督署の決定を取り消しました。

固定残業代については、まだまだ対策が遅れてるなあというのが実感で、訴訟でも論点になることが多いです。
その原因として、少し前までは、固定残業代イコールそれ以上払わなくて良い、という誤った理解が蔓延していたことがあるように思います(流石に近年ではそのようなことはほぼないですが…)。
そのため、会社としての対策が進んでいない印象を抱いていますが、反面で、裁判所も、そこらへんを甘く認定していたように思います。

この裁判例は、労災がらみなので、国宛の判決なのですが、固定残業代の有効性という点では重要な論点であり、今後、対会社の残業代請求でも、かなり使われる裁判例になるのではないかと思いました(つまり、対策をしっかりしないといけない)。

そこで、固定残業代を採用している会社のうち、以下の会社は、就業規則(賃金規程)等を一度見直されることをおすすめします。

 

1 固定残業代のつもりで支給している手当の名称があいまい

2 当該手当の支給対象者に、管理監督者が含まれている

3 手当に含まれる時間外労働の時間数が明記されていない

4 就業規則に、時間外労働手当に含まれる時間数を超えて残業が発生した場合の処理につき、規程がないこと