1 はじめに

UberEatsの配達自転車に対する指導要望が、警察に多数寄せられているとの記事に接しました。https://news.livedoor.com/article/detail/18317445/

 配達員はスマートフォンの専用アプリで仕事を請け負う個人事業主で、業務の拠点を持たないため、警視庁は交通安全指導の難しさに頭を悩ませている。
同庁によると、都民からウーバーイーツの配達員について「運転マナーを守るよう指導してほしい」というメールが多数寄せられているという。
(2020年5月26日 5時30分 時事通信社 上記URL記事から引用)

 

2 行政法規の観点から

まず問題となりうる法令は、「貨物自動車運送事業法」です。

同法は、貨物「自動車」での貨物輸送を定めたものであり、同法にいう「自動車」とは、道路車両運送法2条2項に定める車輌のことなので、自転車や、いわゆる原チャリが含まれません。
したがって、貨物自動車運送事業法による行政対応も困難です。

とすると、道交法で処理するしかないということになりますが、上記記事は、その拠点のなさから、警察がこれを道交法に基づき直接指導することが難しい、ということになるわけです。

あとは、Uber本体が、各輸送自転車に対し、道交法についての指導をどの程度しているのか、なかば黙認していないか、ということに尽きると思います。

3 刑罰法規の観点から

この点は、さすがに法務面できちんとしていると思いますが、各輸送自転車の個別の事案についてまでどの程度指導できているのか、それができていない場合、現行法の枠内だと、道交法違反の幇助ということを言っていくかどうか、というレベルの話にしかならないと思います。

4 民事法の観点から

もちろん、実際に発生した事故について、被害者がUberに対し、一定の民事上の責任追及を図る余地はあると思います。
輸送自転車が雇用関係ではなく個人事業主扱いであるために使用者責任(民715条)は難しいにせよ、「Uber」の名称を背負っている以上、名板貸(商法14条)の責任は考える余地がありうるところです。

5 最後に

私も、歩道でバス待ちをしているときに、UberEatsの自転車にいきなり背後から衝突され、そのまま立ち去られた(おそらく気づいていないと思われる)ことがありました。決して特異なことではないと思います。
UberEatsは便利なサービスですし、もはや飲食店にとってはインフラ化しているので、あまりうるさいことはいいたくありませんが、やはり、こうした問題が顕在化すると、放置して良い問題とは思われず、このあたりは、Uberにも、コンプライアンスの観点から、一定の予防策を期待したいところです。