「崩壊する米国の公的弁護制度」

既に、アメリカの刑事事件における公的弁護制度が立ち行かなくなっている事態については何度も、多くのセクターが警告を繰り返している。
そして実際に、発覚した誤判えん罪事件を調べてみると、ずさんな手抜き弁護が明らかになっていて、その原因は被告人が貧しくて公設弁護人しか頼めず、その弁護人が忙し過ぎて十分な弁護を提供しなかった、ということ
が相当多いことがわかっている。
このことは対岸の火事ではない。
米国と同様、日本でも憲法で弁護人の援助を受ける権利は保障されているが、最高裁は「弁護人が付いていればそれでオッケー」としか言っていないので、質的保障は憲法上も解釈上もない。「効果的」で「十分な」弁護の提供を受けられなくても裁判所は気にしません、という態度である。

 

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これは、10年後の日本の刑事弁護の姿だと思います。

当番弁護制度(逮捕勾留後、最初に弁護士を呼んでアドバイスを受ける制度)は、弁護士会=僕らの会費で維持している制度です。
弁護士会費は福岡の場合月6万を支払っており、年間72万。
年売上1000万だとするとその経費率は7.2%にも達します。
そうやって、やっとこさ維持している制度ですが、「弁護士が食えない」という話はそこらここらで聞く話であり、なおかつ、貸与制で修習貸与金を返還しなければならないとなれば、なおさらです。

勾留後は多くの事件が国選となり、国からお金が出ますが、労力に見合った十分な対価とはいえません(土日関係なく動くわけで、交通費も自腹です)。

公益として、この職業の宿命として、しなければならない、と思いますが、会員がそれを支えきれるだけの経済状況になくなる日はそう遠い日ではない。
とすると、当番弁護に始まる刑事弁護制度の経済的破綻は、そう遠くないと思われます。

とはいえ、その分野に公的資金を注入することは、昨今の社会情勢や市民の理解という点では、難しいと予想しています。なぜならば、「弁護士は悪者をなぜ弁護するのか」とは未だに一番よく聞かれる質問でありますが、これは、「捕まっている=悪いヤツ」という前提があるからです。

この前提が市民から拭い去られないかぎり、弁護士が被疑者(悪者とは限らない)を弁護する活動に予算をつけるなどということに、市民的理解が得られるとは、到底思えないのです。

弁護士(会)は、昨今盛んに広報や業務拡大を叫びます。
しかし、そんなことより、こういう前提を拭い去るような地道な活動(一例として法教育など)をしっかりとやること、そしてそれが効果を生むために、弁護士はしっかりやってるんだということを、わかりやすく伝えることのほうが重要じゃないかと個人的には思います。

「あなたの暮らしの応援団」などという意味の分からない広告宣伝より、弁護士の言うことに信頼がおけるという意識が芽生えれば、業務は拡大すると思うのですが・・・