ときどき、大都市の法律事務所その他が、福岡(に限らず地方)にやってきて、公民館やらビルを借りて「出張法律相談会」なるイベントを開いていることがあります。

そうした事務所は、「出張法律相談会」の前に、その地域にDMやタウン誌などを使って広告を打ちます。
その内容は、「過去に◯◯円回収した人がいます!」といった内容が多いのです。
これは、広告規程すれすれ、もしくは違反しています(ガイドラインにも違反の典型例が掲載されています)。
そして、各地の相談会場を弁護士がドサ回りして、事件を持ち帰って受任する、というスタイルです。
個人的には、それはそれで別にいいと思うのです。広告の問題なんて形式的な問題だと思いますし。

ただし、ちゃんと事件処理をやってくれたら、です。

ところが、過去に、過払いがブームだった時代、こうした「出張法律相談会」が各地で横行し、それからしばらくして、その事務所に依頼した依頼者とみられる人から

「弁護士(など)に頼んだがどうなっているのかよくわからない!」

ということで、相談を持ち込まれることが多くありました。

その内容を見ると、たしかに、今この人の債務がどうなっているのか、どういう処理をその事務所がやっているのかよくわからない・・・
あるいは、破産にすべき事案なのに、ムリのある返済計画で任意整理し、その後やっぱり返せなくなって相談にくる、というケースもしょっちゅう出くわしました。

ただ、そのころには、その事務所はもう大都市に帰ってしまっているので、依頼者だけがポツンと取り残されて放置されてしまうのです。
連絡手段は電話だけなのに、そういう事務所は、電話しても、弁護士がいない(ドサ回りしているから)。事務員が対応するが、事務員では処理しきれるわけがない(そもそも、してはいけない)。

過払いバブルの末期のころはそういうのが多かったことを思い出します。
過払いで食ってた事務所が、過払い減ったから、過払い需要を探してさまよっていたのだろうと思われます。
近くの弁護士会に言っても、その弁護士は、大都市からやってきており、別の弁護士会に所属しているから、対応がしづらいのです。
結局、こういう事案では、依頼者にかなりの被害が出ているはずなのに、弁護士会は、ほとんど何のおとがめも出してこなかったのではないか、と思われます。

そういう被害の端緒となるのは広告ですが、日弁連・弁護士会は、ちっとも広告への対処をしようとしません。
消費者庁が入って初めて問題になったくらいで、日弁連や弁護士会として対処したことがあるという話は寡聞にして聞かないのです。
広告規程は紳士協定的な要素を呈していて、真面目に守ろうとする人が損している構図になっています(現に、弁護士会の公式見解は『弁護士会や法テラスには広告規程が適用されない』なので、通常の事務所なら問題視される広告でもやれるという点で、不公平ささえある)。

日弁連や弁護士会は都合のいいときだけ「市民目線」とか言ってるが、市民に被害が生じる端緒がたくさんあるのに、そういうところで何もしないから、弁護士会の粛清能力に疑問が呈されるのであって、見舞金とか払えばいいとかそんな問題じゃないと思うんです。

そうだとすると、結局、相談する側・依頼する側で警戒・自衛するしかない、ということになります。
弁護士としては、上記のような不心得者がいるために、一緒くたに警戒・自衛されるわけで、困ったものだと思いますが、ひとまず目の前にある案件を誠実に着実に地道に愚直に処理していくべきだろうと思います。

こうした経験則から、お伝えしたいのは

他地域からきた弁護士(等)による「出張法律相談会」には、くれぐれもご注意ください

ということです。